Kissのひとりごと

日々のいろいろな場面で感じた心象風景や人生を三倍楽しむために工夫してきた小さなヒント……
などを気ままに綴っていく1片1片がやがて、Kissファンの楽しみとなれば・・・

*** 旅のもう一つの楽しみ、美術館との出会い ***

Vol.ⅩXI Sept. 1. 2018

9月になり、うるさいほど大合唱していたセミたちに代わり、朝夕は、涼しげな虫の声が聞こえてくるようになり、異常気象の昨今とはいえ、季節は確実に巡っているのだと改めて思うのであるが、暑さから解放され、少し身体が楽になってくると、封印されていた旅への衝動がふつふつと沸いてくるのもまた、この9月なのである。

旅の楽しみは、旅に出るまでの準備期間のワクワク感と旅先でのお薦めスポットの見学、独特の文化に触れる瞬間、そして何よりグルメ・温泉や宿のもてなしにあると思うが、我が家ではもう一つ楽しみにしていることがある。それは、その近辺にある「美術館」や「博物館」を訪ねることである。
都内には、もちろん建物も所蔵品も立派な美術館が沢山あるのだが、最近は各地に一生懸命頑張っている個性的な美術館が多数存在していて、うれしくなることが多いのである。
そのなかで、いくつか、特に印象に残っていてリピートしたい美術館をあげてみることにする。
まず、福島県の「諸橋近代美術館」、広大な土地に建物の外観・水をたたえた風景共に美しいのだが、特にスペインの奇才サルバドール・ダリの作品を多数所蔵・展示しており(アジア一、世界でも4番目の収蔵量)ダリファンにとってはこのうえない至福の時間をすごせる美術館であった。
同じように広大な土地に建つ美術館だが、芝生の庭にエッジのきいたイタリアの具象彫刻家ヴァンジの作品を配した「クレマチスの丘」 (静岡県三島市)は、ピクニック気分で楽しめる美術館である。日常の様々な場面を切り取った作品たちに思わず微笑んでしまうこと間違い無しであろう。ここは、我が家が訪ねた頃はミュージアムショップも充実しており、気が利いていて思わず欲しくなるものが多数あったと記憶している。(と、いうのもこの時買い求めたオブジェや小物入れが今もリビングで活躍しているのである)併設されているビュフエ美術館もなかなかのものなので、セットで訪ねると良いだろう。
三島にはもう一つ外せない「佐野美術館」がある。こちらは、ぐっと渋く刀剣の名品と何より刀の鍔の収蔵が素晴らしく、日本人の美意識の高さとあの小さな鍔にかけた武士の心意気と職人の技術力が感じられ、何とも感動しきりであったことを思い出すのである。
そばには、名水柿田川水郡もあり、こちらもぜひ訪ねたい。
「静岡市立芹沢銈介美術館」も印象に残る美術館であった。訪ねるまで全く知らなかった染色家の作品に触れて、一気に名前が心に留まることになったのである。ここは、建物の入口にも特徴があり、その美しさと斬新さ故に好きな美術館のひとつとなっている。周辺は石垣イチゴが有名なので、イチゴの時期がお薦めである。
同様に服飾関係で訪ねてみたら、面白かったのが「久保田一竹美術館」(山梨県河口湖町)である。『一竹辻が花』を長年掛けて完成させ、その作品自体も展示方法も圧倒されるほど美しい!洞窟のような門や展示室も個性的で作者の独自性を垣間見ることのできる美術館であった。

大好きな金沢方面にも、行ってみたら意外と穴場で、内緒で教えたくなる美術館(?)が3つある。東茶屋街近くにある「金沢蓄音機館」は、小さくて見落としてしまいそうだが、蓄音機の歴史やしくみが丁寧に展示されており、また、世界で初めて、録音された音が、エジソン本人による『メリーさんの羊』で、貴重なその声を聞くことができるのである。
 金沢城からほど近いところにある「石川県立美術館」も時間をかけて見るべき収蔵品が常設展示だけでもかなりあり、さすがに加賀百万石の伝統工芸の歴史と奥深さを知らされ、 1日ゆっくり鑑賞したいと思わせてくれるのである。
そして、加賀市の片山津温泉から少しはずれた柴山潟のほとりに地味に建っている「雪の科学館」は、物理学者中谷宇吉郎 (訪ねるまで全く知らない名であった )の「雪は天から送られた手紙である」という名言そのままに可愛らしい形状の建物や博士の人となりが発見できる雪に関するとてもロマンティックな科学館である。氷のペンダントを作ったり、雪に関する選りすぐりの書物が購入できたり、ほっこりのんびりできる場所でもある。金沢は、やはりカニ解禁となる 11月第 2週目以降に訪ねるのが楽しみも倍増するだろう。
ロマンティックといえば、諏訪湖畔にある北澤美術館のラリックやガレといったガラスの収蔵・展示も素晴らしく、心奪われるものがある。特にラリックの作品に魅力を感じ、憧れる我が家では、何度も訪ねるスポットのひとつでもある。一実業家のコレクションでよくこれだけ集めたものだとため息がでるほどである。
軽井沢では、観光スポットの喧噪から離れて、スケートリンクのほど近くにある「セゾン現代美術館」がとても楽しい。もちろん庭にも現代彫刻が点在しているが、館内の展示物がこれぞ、現代美術という五感で感じるものが多く、美術への概念が覆され、新たな発見にワクワクするのである。
逆に歴史を感じる場所が、軽井沢から中軽井沢に向かう途中にひっそりとある「市村記念館」である。近衛文麿が使用していた別荘なのだが、一般公開しているので、訪ねると当時のままの調度品などにセンスの良さと生活ぶりが覗われ、軽井沢の歴史を感じることもできるのである。

栃木県那須にあった「ニキ美術館」もエントランスから建物を含め作りが素敵で、大好きな美術館であったが、今回ひとりごとをつぶやくに当たり再度調べてみると、2011年8月に閉館したようでとても残念である。フランスのニキ・ド・サンファルという女流芸術家で作品がユニークなので、好きになった作家の一人であった。彼女は確か、ファッションモデルから自我に目覚め、自己表現として様々な手法を試みながら (例えば、ライフルで空中に投げたペンキ缶を撃って飛び散った色を作品にするなど・・・)造形作家になったと覚えている。海外でも公共の屋外オブジェとしてかなりの数の作品が存在しているはずである。カラフルな色と造形の面白さに心惹かれるものがあったのだが、日本では彼女の作品に出会うことは今となっては難しいのだろうか?
こうして、思いつくままに旅で出会い、忘れられない美術館たちを書き綴ってみると、どの美術館も発案者や創始者の作品に対する想いや収集の情熱が感じられ、また、展示する建物自体にも美しさやこだわりを強く感じるのである。この情熱の表現が地方だからこその強みとしてそこにあるのかもしれない。だからこそ、出会った時の衝撃と喜びも大きいのだと思う。
とかく海外に目を向けがちだが、日本国内にも素晴らしい美術館が沢山あることを認識できるのも旅の魅力の一つに違いないと思うのである。
もう一つ、建物の美しさで気に入っている美術館がある。これは都内にある美術館だが、一番のお気に入りなので、もう少しお付き合いをいただきたい。それは、目黒にある「東京都庭園美術館」である。旧朝香邸を当時のままに美術館としているのだが、邸そのものが美しい芸術作品なので(お庭ももちろん美しい)それだけで、満足してしまうのである。当時の贅を余すところなくつくしたアールデコ様式のその設計は、床・天井・階段の手すり・壁・シャンデリア・家具調度品はもちろん、窓枠や暖炉の装飾品・ドアノブにいたるまで計算された美を追究している作品となっており、何度訪ねても飽きないほどであり、都度魅了されるのである。しかもこの美術館はいつも見応えのある企画展を催してくれ、邸そのものと企画展と2倍楽しめるのである。
まだまだ、旅で巡り会った素敵な美術館が次から次へと浮かんでくるが、また機会があればお伝えすることにして・・
これから行く先々で新しく出会うであろう作品や美術館たちに期待を寄せつつ、ペンをおくことにしよう。

「旅先で味わう幸せな瞬間は、美しい美術館との出会いかも・・?」 というひとりごとでした。
 
 
*本文内の写真はイメージ映像もあります。必ずしも本文と一致するものではありません。

 参考:・諸橋近代美術館  dali.jp    
   ・クレマチスの丘  https://www.clematis-no-oka.co.jp
   ・佐野美術館    www.sanobi.or.jp
   ・静岡市立芹沢銈介美術館 www.seribi.jp
   ・久保田一竹美術館 itchiku-museum.com
   ・金沢蓄音機館   www.kanazawa-museum.jp/chikuonki
   ・石川県立美術館  www.ishibi.pref.ishikawa.jp
   ・雪の科学館    http://kagashi-ss.co.jp/yuki-mus/yuki_home/
   ・北澤美術館    kitazawamuseum.kitz.co.jp
         ・セゾン近代美術館 https://www.smma.or.jp
   ・市村記念館      www.town.karuizawa.lg.jp/www/contents/1001000000931/
   ・東京都庭園美術館 https://www.teien-art-museum.ne.jp

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