Kissのひとりごと

日々のいろいろな場面で感じた心象風景や人生を三倍楽しむために工夫してきた小さなヒント……
などを気ままに綴っていく1片1片がやがて、Kissファンの楽しみとなれば・・・

***** 須田 菁華(すだ せいか) によせて*****

Vol.ⅩⅩⅦI  April, May, June 1. 2019合併号 

久しぶりに須田箐華の作品を手に取り、購入するチャンスに恵まれた。少し季節外れではあるが、白地に菁華の赤で梅の花びらを大胆にあしらった小皿の揃えである。須田菁華といってもメジャーでも、マスコミなどに取り上げられる陶芸家でもないので、この名前に反応する人はあまりいないかもしれない。
以前、毎年11月のカニ漁解禁に合わせて金沢へ出かけていた頃に定宿に決めていた山代温泉で出会った九谷焼窯元が須田菁華であった。
山代温泉も初代須田菁華(九谷焼)もあの魯山人にゆかりがあると知り、ぜひとも訪ねたいと思ったのがきっかけであった。
 魯山人に陶芸の手ほどきをしたのが、初代であり、今でも山代温泉には彼の作品が脈々と残されており、まつわる史跡も「 魯山人寓居跡いろは草庵」 として見ることができるのだが、4代目もまた、作品 彼の地で造り続けており、町の外れにある店舗は昔懐かしいガラスの引き戸を開けて中に入り、靴を脱いで上がる畳敷きの店内には、作品 ちがガラスケースや、畳に無造作に置かれており、高価な作品ではあるが、気軽に手にとることができる。

初めて訪ねた時には、その店舗の風情に圧倒され、また美しい色合いと大胆な絵付けの大皿に心を奪われてしまい(確か黄色い海老の図柄だったと思う)、1点でも高価でなかなか手に入れられない残念さを味わってことを覚えている。それでも、確かご飯茶碗を無理して購入したように記憶している。
その後、毎年訪れては、少しずつその時の気分に合った作品たちを買い足してきたのである。きけば、婚礼用の引き出物として受注生産などがあるようで、さすがに金沢地区はすごいなあと妙に納得した次第であった。我が家も一度展示してある手頃な(お値段的にも)大皿をやっと決断して購入しようとすると、4代目がこれはサンプルなのでこれから造るから、半年先になるか、1年先になるか・・・できたら郵送するから、代金は受け取ってから振込みでよいといわれた事があった。何ともおおらかで、とかくクレジット決済などで便利に物を手に入れられる時代に、不思議な感覚を味わったものであった。
須田菁華の作品は、日常使用する食器が中心なのだが、使い出すと妙に手に馴染み、大切にしたくなるのである。また、彼の作品の「赤」は、唐辛子を描いた作品に象徴されるように、他の九谷焼にはない独特の美しさと奥行きがあり、虜になってしまうのである。そんな箐華の作品には、我が家のように山代温泉で出会ってから気に入ったという、コアで熱烈なファンが多いようである。実は、最初に購入したご飯茶碗を不注意で割ってしまったことがあり、寂しい想いをしたのだが、翌年また同じ絵柄のものを買い求めることができ、嬉しくてほっとしたこともあったのである。
また、以前、都内に、箐華の作品に盛り付けた料理を食すことができる小料理屋があるときいたことがあるが、是非一度チャンスがあれば行ってみたいと思っている。
普通の食器に比べれば、高価ではあるが、大切にしまい込まずに、日々手に触れて使い込むほどに味のでてくるこの不思議な作品たちに和だけでなく、時には洋のお料理を自由に合わせてみてマッチングしたときの楽しさもまた、格別である。
ここ数年は彼の地に出向いていないが、毎年4代目からは年賀状を頂いており、そんなところにも魅力が隠れているのかもしれない。

 
   「気に入った器を日々使えること、大切にできることが、心豊かに暮らせるヒントのひとつかもしれない」 というひとりごとでした。

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